「演劇入門」鴻上尚史

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店主からのひとこと

店主の敬愛する鴻上さんが、コロナ禍の中の2021年に書いた本です。

演劇とは何か?という事を、分かり易い言葉で、平易に書いています。またこの本を書いた頃の鴻上さんは、「同調圧力」などの本を多数書かれていますので、演劇と同調圧力についての話もみられます。

第一章は、ちょっとまどろっこしい説明になっていますが、後半に進めば進むほど、実際の例を紐解いて説明されるので面白いです。第一章はちょつと読み難いものの、演劇論では大事な本、ピータ・ブルックの「なにもない空間」への言及もあります。

実は「演劇入門」という本のタイトルは世に何冊か出ています。鴻上さんと同年に、演劇界の芥川賞と呼ばれる、岸田國士戯曲賞を受賞した、平田オリザさんも、同じタイトルの本を書いています。作る演劇のスタイルは全く正反対な2人の劇作家の、同名の本を比べてみるのも面白いかもしれません。

店主は、「演劇入門」というタイトルに即した本としては、鴻上さんの方が圧倒的に誠実だと思っています。

名文・名言・名ゼリフ

「つまらない演劇は、つまらない映画より、何倍もつまらないインパクトがある」からです。目の前で生身の人間が、理解できないつまらないことを一生懸命している―その苦しさ、退屈さ、気詰まり感、抑圧は、映画の何倍、何十倍という強烈さなのでしょう。


「芸術と芸能の違いは何だと思いますか?」と聞かれたことがあります。僕は、「芸術は、『あなたの人生はそれでいいのか?』と挑発するものであり、芸能は『あなたの人生はそれでいいのですよ」と肯定するものである」と答えました。
ただし、優れた作品には、どちらの要素も含まれていると、僕は思っています。割合が違うだけで。
僕が20代からずっと理想だと考えていたのは、芸能と芸術をつなぐ一本のロープの真ん中に位置する作品です。ロープの片側を芸術が持ち、もう片側を芸能が持ち、両者が激しく引き合う、ピンと張りつめたロープの、ちょうど真ん中辺りに立つ作品を創りたいと思うのです。


観客のあくびひとつで、未熟な俳優は動揺します。それ以降の演技がメタメタになる、なんて悲劇が起こります。そういう時は、どんな観客でも内容が変わらないテレビや映画などの映像が心底、うらやましくなります。でも、お客さんとのインタラクティブな交流が成功して、俳優の演技水準が上がった時は、「ああ、演劇を選んでよかった」と心底思いますから、自分でも勝手だと思います(笑)。

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参考図書

書籍情報

出版社 ‏ : ‎ 集英社 (2021/6/17)
発売日 ‏ : ‎ 2021/6/17
言語 ‏ : ‎ 日本語
新書 ‏ : ‎ 272ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 408721172X
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4087211726

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